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あまりにも恵まれすぎていませんか 化学科に籍を置き学生実験を担当しているが、最近の学生はガラス器具をうまく使えなくなっている、つまり破損がはなはだ多い。実験中、ガラスは脆くて割れやすいという認識が消えてしまっている。PL法(製造物責任法)に象徴されるように危険な商品は身の回りから姿を消し、老人や子供にも扱い易くなっている。使用上の注意はほとんど必要ない商品が身の回りにあふれているがために注意をしながら器具を使用しようという意識が希薄となり、器具の破損はないのが当然と考えている。しかし、実験に使うガラス器具類はまず実験目的にあった働きをすることを第一に、安全や使い勝手はその次の条件で作られていて不安定な形や壊れ易い器具類は多い。破損の際には「器具が壊れました」と言い、決して「壊しました」と言ってこないのも最近の学生の認識を示している。また、卒業研究では安全志向が強い。うまくゆくかどうかわからない実験にはなかなか手を出したがらず、ある程度めどのついたものをやりたがる。未知なものを敬遠してしまう傾向を強く感ずる昨今となっている。「たとえ良い結果が出なくとも、これではうまくゆかないという事がわかる事も研究成果なのだ」と言い含めなくては手を出したがらない。安全で整った環境にいることが当然で、そうでないものにはなかなか近寄ろうとしない。これが許される環境の中で育ってきた最近の学生達。 少々古い話をさせていただきたい。十余年前に学生や社会人といった、海外渡航経験のない者6名を引き連れてタイの農村を訪問したことがある、交流そして途上国の生活がどんなものかを知ろうという目的であった。畑の中の倉庫を借り、電気・水道・新聞はなし。しかし町への買い出しは可能で、天水(飲料用雨水)用の大甕は備わっていたのでプロパンガスボンベとレンジを買い込み、地元の方々の生活と同レベル程度、いや買い込んだ食材の質や量からは高級レベルでの1ヶ月であった。着いたその日の夕食は村の人たちが準備してくれていた。食器はずいぶん古くなったホーロー引きで十分にひびが入り見事な縞模様、翌朝さっそく下痢を起こすものがあらわれた。お世話役の農家から蛙の姿焼きが何匹も泳いでいる大鍋に入ったスープの差し入れを頂いた時には「ワー気持ち悪い、こんなもの食えない」と大騒ぎ。食べさせたらおかしくなると判断しそのままお返しをしてしまったが、見ただけにも関わらず下痢を起こした者が出た。資料にと残した記録は実に面白いものとなった。体調を崩し休んだ日付も、その延べ日数も見事に若い順。体力からは二十代が最も強い筈だが、精神力もしくは適応力に比例と判断した次第であった。本人達の名誉のために書き添えるならば、その後に改めてタイに渡り長期滞在で仕事を始めた者や何度も途上国に渡る者がでている、つまりは慣れの問題であった。 |
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