中央学術研究所
未来のために”今”を考える
中央学術研究所とは

行事のお知らせ

研究所刊行物

佛教根本聖典

明日への提言

研究所周辺地図

お問い合わせ

HOME
Page: 1 | 2

3.物作りによる止観
 ロボコンは、彼らを好ましい意味での夢中という状態に誘導する。座学の授業では10分間ともたず保健室へ出ていってしまう生徒が、ロボット製作では2時間もがんばり通す。「ロボットを作っているときは、時間を感じなかった。気がつくと、いつも終わり5分前だった。それほど集中していた。」と書いている。この状態は一種の三昧である。
 ロボコンのためのロボット作りは、4カ月間だが、彼らはその間「物作り三昧」ということを経験する。もちろん、止観のような本格的な三昧とはちがうであろうが、十五歳の在家の少年が体験する三昧(止)としては満足すべきであり、その効果としての目覚め(観)も十分だと考えられる。
 懸命夢中にロボット作りをすれば、生徒の表情が柔和に温厚になり、素直になる。トイレのドアの開け閉めも、ひとりでに静かになる。

4.全国に広がり出した熱気
 教育荒廃の今日、それを嘆く記事や論文は多いが、具体的にどうすれば教育を救済できるのかという論調は見当たらない。
 しかし有り難いことに、筆者やロボコン関係者は、実証付きで教育救済の具体策を手に入れることが出来た。少年が目覚め、物や先生やロボコンに感謝の気持ちを抱き、生徒自身の口から「教育改革はロボットコンテストから」という、歓喜に満ちた声が聞かれるという手応えは何ものにも代え難い。
 それはおそらく、生徒たちの阿頼耶識という深層の心の琴線をかき鳴らす力が、また技術科教師をしてハッスルさせるだけの手応えが、ロボットコンテストには潜在しているからであろう。今、ロボコンによる教育改革は、大きなエネルギーとなって全国に広まりつつある。期待に胸がふくらむと同時に、責任の重さを痛感する次第である。

◆プロフィール◆
森 政弘(もり まさひろ) 【1927年生】
昭和25年、名古屋大学工学部電気学科卒業。
東京大学助教授、東京大学教授、東京工業大学教授を経て、現在東京工業大学名誉教授、自在研究所社長。
著書:『森政弘の仏教入門』、『心眼』、『「人がいい人」は「いい人」か』(佼成出版社)他多数。