中央学術研究所
未来のために”今”を考える
中央学術研究所とは

行事のお知らせ

研究所刊行物

佛教根本聖典

明日への提言

研究所周辺地図

お問い合わせ

HOME
Page: 1 | 2 | 3

「電子記録はそのままでは長くもたない」
 2000年9月スペイン・セビリアで開催されたICA大会(国際文書館評議会世界大会、4年に1度開催され、世界の文書館関係者が集まる。セビリア大会の参加者は3,000人。)では「電子記録はそのままでは長く持たない」ことを前提とした決議が採択された。アーキビストの立場から言えばIT時代とはいえ、電子記録はアーカイブとしての永続性には問題があるという訳だ。技術的には媒体変換を繰り返していけば、電子記録を将来に継承することは可能だが、実務上この方法には法外な費用を要することは、まだ十分知られてはいない。

肉眼で直接読めない電子記録
 紙の文書ならそのまま放置しても、50年や100年の時間そのまま維持されるのは当然のことと考えられている。だが今日の電子記録は、そもそも肉眼で直接読むことは出来ない。常にコンピュータなどの読み出し装置と、読み出しのための仕組み=ソフトウェア、ハードウェアの組合せが確実に整備されていることが、記録を読み解くための条件となる。その上、昨今のIT技術環境の進歩が著しいことも念頭に置くなら、現代の電子記録を読み解くための方法論は、余りにも不安定であることが見えてくる。電子ネットワークを利用してよその記録に悪影響を及ぼすハッカーやウイルスの存在は、進歩する技術のウラの顔だ。紙をいためる虫の防御なら虫干しや燻蒸という方法があるが、ハッカーやウィルスは紙を喰う虫と違って姿形が見えない上に、時も相手もかまわずに深刻な影響を与える。その防御も素人にはなかなか難しい。便利な電子記録だが、知らない間に外部からの侵入者にやられてしまうというコワイところもある。

記録の暗黒時代?
 不安要素を多く抱える今日の記録を長く将来に継承するには、これまで以上に記録を「意識的」に保存しなくてはならないだろう。すなわち、現代の電子記録は、そのまま放置した場合、10年としない間に事実上読めなくなることは想像に難くない。その電子記録の長期保存に思い切った手を打たずにこのまま放置したら、どうなるだろうか。将来、歴史を知ろうとする人々は、この20世紀後半から21世紀の時代は、なぜかそれ以前の時代に比べひどく資料が少ない、という事実に突き当たってしまうだろう。そして、人々は私たちの現代をきっと「記録の暗黒時代」と呼ぶかもしれない。

参考資料:ユネスコウェブサイト
「Sateguarding Documentary Heritage」
http://www.unesco.org/webworld/index.shtml

◆プロフィール◆
小川干代子(おがわ ちよこ) 【1949年生】
東京都立大学卒、東京大学百年史編集室(1975〜1987)、国立公文書館(1987〜1922)、国際文書館評議会円卓会議役員(1992-1996)、米国公認アーキピスト(1989〜)、米国アーキビストコンサルタント登録(1992〜)、法政大学ビジネスアーキピスト養成講座講師(1992〜)、学習院大学講師(1996〜)、東京学芸大学講師(1997〜)、静岡大学講師(1999〜)、国際資料研究所代表(1992〜)。
著書:『情報公開の源流』(岩田書院ブックレット1、1996年)、『文書館入門』(国際資料研究所、1997年)、『文書館用語集』(大阪犬学出版会、1997年)共同執筆。